2007年11月7日、ミャンマーとの国境付近に位置する怒江リス族自治州貢山独龍族怒族自治県独龍江郷に、新たな小学校が誕生しました。
支援第16校目にあたる本校「日中友好巴坡僑心小学校」は、少数民族・独龍族(トールン族)の小学校で、現在82名(開校後は約120名)の児童が学んでいます。
独龍族は中国で最も人口が少なく、わずか7500人弱(2010年現在)の民族。他民族との争いを避け、過酷な自然要塞に守られた独龍江郷に移り住んだと言われています。
協会支援校の中でも最奥地にあると言える当校までは、昆明から往復約6日。特に「貢山独龍族怒族自治県」という地域から、独龍江まで続く唯一の道「独龍江公路」に入ってからは、右手にそびえるような岩壁、左手に断崖絶壁の谷を見ながらの大変な悪路を、1日がかりで進むこととなります。
これまでで最も危険な旅路となった、恒例の「開校式ふれあいの旅」に参加したのは、初鹿野惠蘭理事長、東京本部狩野、雲南支部林、杉谷隆志専務理事、片岡巖顧問、小澤文穂顧問ら役員顧問スタッフの面々ほか、5人の会員の皆さん。
命がけの旅は会員の皆さんにどんな思いを残したでしょうか?
途中、車が一台故障するなどのトラブルもありましたが、全員が無事に怪我することなく、独龍江郷へと到着しました。翌日はいよいよ小学校の開校式です。
「日中友好巴坡僑心小学校」は、外務省「日本NGO支援無償資金協力」を受け、2008年3月の完成を目指して建設中の小学校です。独龍江と外界とを分断する高黎貢山山脈の峠に11月下旬から雪が降り積もり、来年春まで通行禁止となる関係で、校舎未完成のまま、早めの開校式を迎えることとなりました。
建設途中の学校で、長旅でへとへとの一行を待っていてくれたのは、笑顔いっぱいの独龍族の子どもたちでした。
在校生82名の歓迎の歌声とともに開催された開校式、まずは児童代表の挨拶です。続いて当協会を代表し、初鹿野理事長はじめ片岡巖顧問、杉谷専務理事からご挨拶がありました。
初鹿野理事長が、子どもたちに「先生の言うことをよく聞いて一生懸命勉強し、故郷のために頑張ってくださいね」と呼びかけると、大きな「ハオ!(はい!)」というお返事が返ってきました。
片岡顧問からは子どもたちや先生方へ、日本の会員の皆さんから預かってきた文房具の寄付が贈られました。杉谷専務理事からは、子どもたちへ日本の童謡「夕日」のプレゼント。日本語の歌に、子どもたちもみんな興味津々!「今度来たときには、皆さんに日本の童謡の入ったCDを贈りますね!」と約束しました。
子どもたちの元気いっぱいの歌声が
出迎えてくれました児童代表の挨拶では、初めての大役にマイクを持つ手がぶるぶる! 手足の不自由な子もいましたが
みんな元気いっぱいです!参列者の首に、学校の習慣である
紅領巾が巻かれました杉谷専務理事と女の子
笑顔でにっこりと握手初鹿野理事長、片岡巖顧問から
子どもたちへ贈る挨拶上級生と子どもたちのお母さんたち
真剣な顔で開校式を見守ります現地パートナー帰国華僑聨合会
李巨濤副主席からのご挨拶「上を見てください」杉谷専務理事の言葉に子どもたちは皆青空を見上げます。 「何が沈んでいきますか? 太陽ですね」と「夕日」の歌をプレゼント 日本からの文房具やお菓子のプレゼントに子どもたちもワクワク顔 会員が中心となって子どもたち一人ひとりにお土産を渡します 「早く早く!」と大興奮の子どもたちは押し合いへし合い 「何もらった?」とお互いに受け取ったものを見せ合いっこ 子どもたちはこの日のために一番の洋服で待っていてくれました
よく見るととても汚れていて、袖や襟元がほつれていますけれど無垢な子どもたちはいつもニコニコ、楽しそうです
開校式が終わると、日本側からの参加者、現地パートナーや工事現場の人たち、子どもたちや村人が一緒になって、賑やかな夜の宴を開きました。電気がないため蝋燭を囲って、村の人たちが精一杯のもてなしの気持ちで用意してくれた料理を食べたり、焚き火の周りで手に手を取り合って伝統の踊りを踊ったり、日本や雲南省の歌を歌ったり……宴は夜11時過ぎまで続きました。
独龍族は普段から他民族とあまり交流がなく、外国人となると、見るのも初めてという人がほとんどです。それでももてなしのお酒で心を奮い立たせると、村人も、日本からの参加者も、最後には言葉の壁を越えて、大いに盛り上がりました。中には酔っ払って、記憶がなくなってしまった方も数名! でも現地の人にとって、そこまでして自分たちの輪に飛びこんでくれたことは何よりも嬉しかったようですね。
その夜は、すでに完成した学生寮で寝泊りです。会員の皆さんが、実際に自分たちの手で建設した学校に宿泊するということは今回が初めてのこと。今後、子どもたちが使うことになる寮で、会員自らが寝泊りをしたということは、寮の安全性を確認する上でも、大きな意義となったのではないでしょうか。
開校式後は、現場責任者とともに
今後の工事についての打ち合わせ電気がないため、蝋燭の明かりの中
精一杯の料理がふるまわれました焚き火を囲って日本からの参加者、子どもたち、 村人や工事責任者、現地政府や現地パートナーの皆さんが、分け隔てなく一緒に踊りました 寮で休憩中の会員、スタッフの側に子どもたちがいつもべったり! 「写真を撮ってくれますか!?」
初めてのデジカメに大興奮この写真は子どもたちが撮ったもの!
とても自然な表情をしていますね同じく子どもたちの撮影した写真から
初めてのデジカメとは思えません!お手伝いに来ていた中高生
「将来は独龍江で教師をしたい」と将来の夢をこっそり教えてくれました日本と雲南省の友情に乾杯!!
外国人を初めて迎えるシャイな現地の人たちも、お酒の力を借りて百人力
今回、印象に残ったのは、子どもたちの礼儀正しさです。写真を撮る時にはズボンの裾を直したり、質問をしたいときには「すみません」と一言断ってから話し始めるなど、先生方の教育が行き届いていることを感じました。
また同時に、手足が不自由であったり、目が悪かったり、咳をしている子が多く、子どもたちの健康状態が非常に気になりました。地域にまともな病院がなく、特に学校のような閉鎖的な空間では、ひとり風邪をひくと、全員に移ってしまうのです。
日本から参加した皆さんからも「子どもたちがこんな貧しい地域で生活しているなんて胸が痛む」「ここは中国ではないですね。こんなひどい場所がまだまだ雲南省にはあるんだ」と実感のこもった感想をいただきました。昆明から片道3日もかけて、さらに命の危険すらある悪路を越えて現地を訪問したことで、その過酷さを身をもって体験したゆえの言葉だと思います。
【現地パートナー】
今回も雲南省側の大きなご協力があり、開校式を無事に終えることができました。特に学校建設に当たり当協会のパートナーとして大いに力を発揮してくださいました現地機関について、ここに感謝の意を込めてお名前を記したいと思います。
雲南省帰国華僑聯合会 副主席・李巨濤
【写真提供】
掲載写真の一部は、会員の方よりご提供いただきました。