Home > 50の小学校プロジェクト > ベトナム国境 雲南省紅河州河口瑶族自治県の小学校3校支援
画像:龍堡小学校 校門

 2024年7月、雲南省紅河州河口ヤオ族自治県(以下、河口県と略す)教育委員会の要請を受け、初鹿野理事長、林理事、現地スタッフが当県の小学校を視察しました。その経緯や現地の状況、今後の支援プロジェクトについてご紹介致します。

河口県の概要と現地視察の経緯

 河口県は雲南省の南西国境に位置し、昆明市から約400㎞、河を隔ててベトナムと接しています。面積は1332平方キロ、総人口は9.75万人で、雲南省で唯一ヤオ族の自治県で、独自の文化や歴史を有しています。亜熱帯気候のため温暖で、湿度が高い地域です。農村部では1950年代から80年代にかけて義務教育課程の学校が建設され、現在、老朽化による問題が非常に深刻です。
協会はこれまで「50の小学校プロジェクト(小学校校舎、教育施設の建設支援事業)」等、雲南省の教育支援活動を行ってまいりました。そのため、深刻な状況にある小学校3校(河口県南溪鎮龍堡小学校、河口県南渓鎮螞蝗堡小学校、河口県瑶山郷中心小学)の設備支援と、8名の貧国児童への支援依頼を受け、現地を視察する運びとなりました。
 今回の視察では、小学校2校(河口県南溪鎮龍堡小学校・河口県南渓鎮螞蝗堡小学校)とその小学校に通う生徒の自宅を訪問し、校舎や学生寮、生徒への教育や生活、村の暮らしの実情を知ることができました。

■教育資源の困難と問題

 まず、教育現場の状況について、南溪鎮龍堡小学校の例をご紹介致します。
 40年以上前に建てられた校舎をそのまま学生寮として利用しており、一つの教室に約30人の生徒が暮らしています。室内にはカーテンもなく、机を置くスペースもありません。布団も非常に薄く、冬場は寒さが厳しいです。また、寮にはトイレもないため、わざわざ外のトイレに行く必要がある上、男女一人ずつしか利用できません。しかも、そのトイレは水洗式でなく、衛生環境が悪い状態にあります。加えて、給湯器もないため、寒い冬でも温かいお湯が利用できません。
 食堂も狭いため140人の在校生の内、50人ほどしか同時に利用できず、そのほかの生徒は外で食事をとらざるを得ない状態にあります。また運動場の地面も平坦ではないので雨水が溜まりやすく、生徒たちはのびのびと運動もできません。さらに校舎は老朽化による雨漏りがひどく、浸水、床の沈下、建物の腐食、壁の崩落等、危険性も高いです。生徒たちが安心・安全に学校生活を送ることができる環境の構築を、学校や子ども達は切実に願っています。

3つの小学校のニーズ

 3つの小学校からの要望は以下の通りで、こうした現地のニーズに対し急速な支援が必要です。
▪️南溪鎮龍堡小学校:①サッカー場の改築、②音響と照明設備の購入、③食堂のダイニングテーブルと椅子の購入、④トイレの改善、⑤雨よけの建設。
▪️河口県南渓鎮螞蝗堡小学校:①多目的室の改善、②給水機の設置、③寝具の設備。
▪️河口県瑶山郷中心小学:①湯沸かし器の設置、②制服の統一、③給湯器の設置。

温かいご寄附と新プロジェクト起動

 協会が10月15日に開催した、第19回チャリティーゴルフコンペにおいて、3つ小学校の運動場整備や給湯器、寝具の購入、生徒たちの制服の購入等への御寄付を募りました。協会の稻福誠顧問が代表取締役会長をつとめ、劉国利顧問が取締役社長をつとめる株式会社ナンセイスチール様から1200万円の多大なるご寄付を賜りました。また、そのほかの参加者の皆様からも大変温かいご寄附を賜りました。子ども達に代わりまして心より深く感謝申し上げます。
協会は現地政府や、協会の活動を応援してくださる皆様と連携し、この新支援プロジェクトを進めて参ります。プロジェクトが完成した際にはぜひご一緒に小学校を訪問しましょう。

視察のエピソード(初鹿野理事長)

 気温40度以上の酷暑の河口県

今回の視察で初鹿野理事長ら一行が訪れた雲南省紅河州河口瑶族自治県(以下、河口県)は昆明から高速鉄道で往復10時間もかかり、ベトナムと国境を接する町です。この時期の河口県の気温は40度以上にもなり、湿度も高くサウナの中にずっと入っているような暑さでした。そのため労働者は涼しい早朝から仕事を始め、気温が高くなる昼間は休み、また午後に涼しくなってから仕事をするという習慣があります。初鹿野理事長ら視察団は当初は3校の小学校を視察する予定でしたが、学校の先生方や政府関係者も昼間は休憩しているので時間が足りず、今回は2校の視察となったのでした。

皆さんの温かいおもてなしに感謝

 視察団一行は現地の主任のご厚意でご自宅にご招待いただき、ベトナム風の野菜中心の料理をご馳走になりました。家の中には調理スペースはなく、数件の家が外にある共同の調理スペースで料理して、主人の90歳を超えるお母さんを含めてみんなで外で食事したそうですが、素朴なもてなしの中に温かさと人間味を感じ感動したそうです。今回の視察を終えて初鹿野理事長は20年以上前の小学校視察のことを思い出したそうです。当時も雲南の田舎はインフラが整っておらず道なき道を視察に行ったそうですが、今は交通網が発達し高速鉄道も発達していますが、視察の大変さは変わりませんが、実際に現地に赴いて目で現状を確かめることの大切さを改めて感じました。また河口県にある中国とベトナムの国境線を案内していただいたそうですが、すぐそこはベトナムなのに線1本で国が隔てられていて、非常に近いのに遠い存在で不思議な感じがしたそうです。

協会「50の小学校プロジェクト」からのお願い

未来をつくる「50の小学校プロジェクト」

今回視察を行った「50の小学校」プロジェクトは、日本雲南聯誼協会の中核的な支援活動の一つです。このプロジェクトでは、これまでに25校もの小学校を建設し、宿舎や衛生設備の改善にも取り組んできました。その結果、多くの地域で安心して学べる環境を実現し、多くの子どもたちの教育に役立ててきました。これらの成果は、皆様からの温かいご支援によって可能になったものです。

10年ぶりの現地訪問

7月には、約10年ぶりとなる現地訪問が実現しました。今回は、雲南省の南部、ベトナムとの国境付近に位置する「龍保小学校」を視察しました。この学校はヤオ族の子どもたちが多く通う山間部にあり、学区はとても広く、広範囲にわたり子どもたちを受け入れています。親が送り迎えの出来ない、他地区の集落や遠方の子どもたちは寮生活を余儀なくされており、小さな頃から親元を離れて共同生活を送っています。

山岳地帯に住む人々と教育の現状

雲南省の94%が山岳地帯であることから、小規模な集落が点在しています。その多くは農業が主な生業で、家々が分散していることが教育環境の整備を難しくしています。近年の脱貧困政策により、道路や住居のインフラは改善されましたが、教育分野への支援は依然として不十分です。
今回訪問した「河口地区」でも、築30年以上の老朽化した校舎や寮、食堂が放置されており、教職員が住む教員寮の状況も厳しいものでした。

明るい未来へ向けて

しかし、皆様からのご支援のおかげで、この地区でも整備が進められることが決定し、来年には新しい整備された寮や施設等が完成する予定です。その際には、支援者や協会会員の皆様と共に完成した学校を訪問し、その成果を共にお祝いしたいと考えています。

ご協力のお願い

「50の小学校」プロジェクトは、教育環境の改善を通じて、地域社会の未来をつくる取り組みです。これをお読みの皆様も、ぜひ現地訪問や今後の活動にご参加ください。そして、少数民族地域の教育支援に引き続きご理解とご協力をお願い申し上げます。

お問い合わせ

日本雲南聯誼協会東京本部事務局
TEL:03-5206-5260  FAX:03-5206-5261
業務時間:平日 10時〜18時(電話受付時間10時〜17時)
休業日:土曜、日曜、祝日、年末年始
E-mail:yunnan@jyfa.org

PAGE TOP