伝統舞踊の魅力に触れる一日
2026年2月11日(水・祝)、東京新聞主催による「第100回記念 女流名家舞踊大会」が浅草公会堂にて開催されました。本公演は、日本舞踊の各流派を代表する名手や花形が一堂に会し、多彩な演目を披露する伝統ある舞踊公演です。
今回の大会には、日本舞踊五大流派の一つであり、日本最古の幻の舞とも称される「幸若舞」の継承・発展にも力を注ぎ、伝統と革新の両輪で活動を続けておられる三代目若柳吉三次様も出演されました。三代目若柳吉三次様は、当協会の新年交流会にもご参加くださり、日本舞踊や幸若舞について貴重なお話をお聞かせくださいました。
このたびはご縁をいただき、協会から初鹿野理事長をはじめ、スタッフおよびボランティアが鑑賞の機会を賜り、会場にて舞台を拝見いたしました。昼夜通しで行われた上演では、長唄、清元、常磐津など多彩な演目が披露され、日本舞踊の奥深い魅力と豊かな芸の世界に触れる、たいへん貴重なひとときとなりました。



鑑賞のご感想 ―武奕含さん―
今回の舞踊大会について、日頃より協会の活動を支えてくださっている武奕含さんより感想をお寄せいただきましたので、以下にご紹介いたします。
武奕含さんは雲南省のご出身で、6歳より舞踊を始め、北京芸術学校にて本格的に研鑽を積まれました。その後、中国を代表する舞踊家・楊麗萍氏のチームに参加し、大型舞台作品《雲南映象》のダンサーとして活躍されました。現在は「日本雲之南芸術団」を主宰し、雲南文化の普及と日中芸術交流の架け橋として精力的に活動されています。

内に宿る山 ― 富士に映る抑制の美と私の原点
100回という節目を迎えた「女流名家舞踊大会」。その最後の舞台を、浅草の地で見届けることができたことは、私にとって特別な体験となりました。会場となった 浅草公会堂 には、日本舞踊の歴史と誇りが静かに満ちていました。
私は中国雲南出身で、これまでプロとして雲南舞踊や中国舞踊を学んできました。前職では日本舞踊の 松本流 と約3年間関わった経験もありますが、これほど多くの流派、そしてさまざまなジャンルの日本舞踊の精髄に一度に触れたのは今回が初めてで、とても貴重な機会となりました。中国舞踊では、身体の線の大きさや跳躍、回転、空間を広く使う動きが特徴的です。一方、この日拝見した日本舞踊は、抑制の美、間(ま)の美しさ、わずかな視線や指先、重心の移ろいだけで情景、そして「内に秘めた感情」を所作で語る芸術だと改めて感じました。
特に感動したのは、若柳吉三次さんによる長唄「富士」です。日本が誇る名峰 富士山 を題材に、春の雪解けや梅雨明けの空、噴火の険しさ、そして羽衣伝説に寄せた秋の巻雲まで、四季と神話を織り交ぜながら描く壮大な作品でした。黒地紋付のすっきりとした姿で、格調高く静かに舞うその姿は、まさに富士山の気高さそのもののように感じられました。自然の美しさだけでなく、畏敬や祈りまでも内に秘めて表現する日本舞踊。その精神性は、山を神聖な存在として踊る雲南舞踊とも通じるものがあります。雲南舞踊では感情を外へ解き放つことが多いのに対し、日本舞踊では感情を内側に沈め、観る者に想像させる余白を残す。その対比がとても印象的でした。
また、坂東雅さんの「女伊達」は、力強さと気品が同居する舞台でした。凛とした立ち姿や大胆な見得には、女性が舞台に立ち続けてきた歴史の重みを感じました。雲南舞踊にも民族の誇りや女性の生命力を表現する作品がありますが、日本舞踊のそれは、より静かな情熱として表れるように思います。さらに、しっとりとした地唄舞や猫のしぐさを交えた新内節の舞踊など、多彩な演目が並び、日本舞踊の豊かな表現世界を実感しました。
1946年から続いたこの大会が幕を閉じることには寂しさもあります。しかし、100回続いたという事実そのものが、日本舞踊の生命力を物語っています。パネル展示で過去の舞台写真を見ながら、芸を継承してきた女性たちの歩みと、時代を超えて受け継がれる「型」の力を思いました。
雲南舞踊もまた、民族の歴史や祈りを身体で語る芸術です。国は違っても、「伝統を守りながら、今を生きる」という課題は共通しているのではないでしょうか。この公演を通して、私は自分自身の踊りを改めて見つめ直したいと感じました。外へ広がる動きだけでなく、内面を深く沈める表現も磨いていきたいと思わせてくれる、忘れがたい舞台でした。
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